6.12 先の代まで資産を維持する(受益者連続信託)

 遺言書で相続人の誰かに相続を指定することは出来ますが、その次の相続まで遺言書で指定することは出来ません。例えば、親が死亡した時にある財産を長男に相続させるという指定は出来ますが、長男が将来死んだ場合にはその子供である孫に相続させるというような指定は出来ません。出来ることは、長男に遺言書を作成するように依頼して、その遺言書で孫に相続させることを指定してもらうことですが、長男がこのように遺言書を書いてくれる保証はありませんし、一度書いてもその遺言書を書き直してしまう可能性があります。

 これに対して、家族信託では確実に最終的には孫に財産が渡るように指定することが出来ます。具体的には、対象財産について、親を委託者、孫を受託者とする信託契約を締結します。そこで、第一受益者を親にして、親が死んだ場合の第二受益者を長男にし、長男が亡くなった時に信託が終了するようにして、残余財産の指定先を孫にします。

  委託者      親
  受託者      孫
  第一受益者    親
  第二受益者    長男
  残余財産の指定先 孫

 このような信託を受益者連続信託と言い、これを使うことによって先の代までの財産の行き先を指定することが出来ます。

 この受益者連続信託が有効な場合は、長男に浪費癖があり、長男に財産を渡すことが不安な場合や長男が再婚しているが、元の妻の子供に財産を渡したいというような場合に有効な方法になります。

 このように、受益者連続信託は、家族信託の中で長期的な視点に立ち、資産の保護・継承を目的とした重要な機能です。これにより、家族の資産を世代を超えて安全かつ効率的に管理・継承することが可能となります。しかし、その設計と運用には専門的な知識が必要なため、信託を設定する際は専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

この記事を書いた人

税理士・中小企業診断士・行政書士 落合和雄
2005 年 3 月 税理士士登録(東京地方税理士会所属)
1987 年 1 月 中小企業診断士登録(東京都中小企業診断士協会所属)
2016 年 1 月 行政書士登録(神奈川県行政書士会所属)
税理士登録以降、相続案件に力を入れ、現在年間約 70 件の相続の相談に応じています。また、中小企業診断士として年間約20件の M&A を含む事業承継の相談に応じています。行政書士としては、遺言書の作成、家族信託の支援も数多く扱っています。
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