6.14 家族信託のトラブル回避(損益通算)

 不動産経営を行っている場合の家族信託のトラブル例として損益通算が出来なくなるという問題があります。損益通算とは、不動産経営で赤字が出た場合に、その赤字と他の不動産やその他の所得の利益と相殺して全体として利益を圧縮できるルールのことです。

 この際に注意しなくてはいけないことは、「信託したアパート等」で赤字が出た場合には、当該損失は0とみなされ、信託していない他の不動産の利益や他の所得の利益と相殺することができない点です。

 例えば、信託したアパートで大規模修繕等が発生して、1000万円の赤字が出たとします。このアパートが信託されていない場合は、この1000万円は他の所得の利益と相殺されて、全体の所得が減少し所得税を減らすことができます。ところが、信託されているアパートの場合は、信託されていない所得と相殺はできませんので、所得税を減らすことはできません。

 このように大規模修繕等で赤字が発生する可能性のある不動産等を信託する場合には、他の利益が出ている不動産等も一緒に信託して、信託財産の中で赤字が相殺できるようにしておくことが重要です。

 一部の不動産だけを対象に信託を行う場合には、この損益通算ができないという点を十分に考慮して信託財産の範囲を決めるようにしてください。

この記事を書いた人

税理士・中小企業診断士・行政書士 落合和雄
2005 年 3 月 税理士士登録(東京地方税理士会所属)
1987 年 1 月 中小企業診断士登録(東京都中小企業診断士協会所属)
2016 年 1 月 行政書士登録(神奈川県行政書士会所属)
税理士登録以降、相続案件に力を入れ、現在年間約 70 件の相続の相談に応じています。また、中小企業診断士として年間約20件の M&A を含む事業承継の相談に応じています。行政書士としては、遺言書の作成、家族信託の支援も数多く扱っています。
ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、関係者みんながハッピーになれる方策を探るように心がけています。

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