6.3 家族信託が遺言書の代用になる場合

家族信託の仕組みを利用すると、遺言書と同等の効力を発生させることが出来ます。具体的には、第2受益者を指定する方法と、残余財産の指定先を指定する方法の両方を活用することになります。

(1)第2受益者を指定する方法

第1受益者が死亡した場合の第2受益者を指定することにより、被相続人が死亡した場合の相続財産からの利益を受ける権利を指定した人に引き渡すことが出来ます。ただし、この時に注意が必要なことは、受託者を受益者とは別の人間にしないといけないことです。何故なら家族信託において、受託者と受益者が同一になった場合には、1年以内に信託契約を終了させないといけないためです。

(2)残余財産の帰属を指定する方法

家族信託では、信託終了時の残余財産の帰属を指定することが出来ます。これを使うことにより、遺言と同等の効力を発生させることが出来ます。

遺言書の代わりに家族信託を活用すると以下のメリットがあります。

①遺言書の書き換え等のリスクを軽減できる
遺言書はあくまでも本人の意思で書くものなので、本人の気が変われば遺言書の内容を書き換えることが出来ますが、家族信託は委託者と受託者の契約になりますので、両者の合意がないと内容の変更は行えないようにすることが出来ます。

②二世代以上の相続財産の行き先を指定できる
遺言書は本人が亡くなった時の相続財産の行き先を指定できるだけで、次の相続発生時の行き先は指定することが出来ません。これに対して、家族信託では第2受益者を指定すると同時に、第2受益者が死亡して、信託が終了した際の残余財産の帰属先を指定することにより、2世代先の残余財産の行き先を指定することが出来ます。

③手続きが簡潔になる
相続では被相続人の戸籍集めや遺産分割といった手続きを必要としますが、家族信託は契約行為なので、これらの面倒な手続きが不要になります。

この記事を書いた人

税理士・中小企業診断士・行政書士 落合和雄
2005 年 3 月 税理士士登録(東京地方税理士会所属)
1987 年 1 月 中小企業診断士登録(東京都中小企業診断士協会所属)
2016 年 1 月 行政書士登録(神奈川県行政書士会所属)
税理士登録以降、相続案件に力を入れ、現在年間約 70 件の相続の相談に応じています。また、中小企業診断士として年間約20件の M&A を含む事業承継の相談に応じています。行政書士としては、遺言書の作成、家族信託の支援も数多く扱っています。
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