相続税は、相続が発生した際にかかる税金の一つであり、農地を相続した場合にもその評価額に基づいて税金が発生します。しかし、日本の農業の持続的な発展と後継者の確保を目的として、農地を相続する際の税負担を軽減するための制度が設けられています。それが「納税猶予制度」です。農地に対して高い評価額により相続税が課税されてしまうと、農業を継続したくても相続税を払うために農地を売却せざるを得ないという問題が生じるため、自ら農業経営を継続する相続人を税制面から支援するために相続税の納税猶予制度が設けられました。
納税猶予制度とは、特定の条件を満たす農地を相続した場合、相続税の支払いを一定期間猶予される制度です。この制度を利用することで、突然の大きな税金の支払いによる経済的な負担を和らげ、農地の継承と農業の継続をスムーズに行うことが期待されます。
相続又は遺贈により取得された農地が、引き続き農業の用に供される場合には、本来の相続税額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税が、一定の要件のもとに納税が猶予され、相続人が死亡した場合等に猶予税額が免除されます。
納税猶予を受けるための主な条件は以下の通りです:
1.相続人(後継者)が農地を継続的に使用して農業を行う意向があること。
2.相続した農地が一定の面積以上であること。
3.農地の使用目的が変更されないことを確認できる担保を提供すること。
三大都市圏の特定市以外の全国の市街化区域では、農業相続人が営農を継続すれば、相続税の申告期限から20年経過時に納税猶予税額が全額免除されます。