相続税の延納は、相続によって発生した税金の支払いを猶予する制度です。この制度は、相続税の納付が困難な場合に利用でき、特に不動産などの現金化が難しい資産を相続した際に重要な役割を果たします。
納付すべき相続税額が10万円を超え、かつ、納期限までに納付することが困難な事由がある場合には5年以内の分割払いが認められます。また、相続財産のうちに不動産等の価額の割合が50%以上である場合には、不動産等に係る税額については15年以内、その他の部分の税額については10年以内の分割が認められます。
相続税の延納を申請するには、納税者が税務署に対して申請書を提出する必要があります。この申請には、相続税の納付が困難であることを証明する資料や、相続財産の詳細なリストなどが必要となることが一般的です。延納の承認を受けると、納税者は相続税の支払いを数年にわたって分割することができます。
延納された相続税には利息が発生します。しかし、この利息は通常の遅延損害金よりも低いため、資金繰りに困難を抱える納税者にとっては有利な選択肢となり得ます。また、不動産などの特定の資産については、更に利息が軽減される場合があります。
延納の期間は最長で10年または15年ですが、この期間中に相続財産を売却した場合、売却益から相続税を支払う必要があります。また、延納の期間中に納税者が亡くなると、相続人が税金の支払い義務を引き継ぐことになります。
相続税の延納は、大きな財産を相続したが、現金資産が不足している場合に特に有効な制度です。しかし、利息負担や将来的な支払い義務を考慮した上で慎重に利用する必要があります。