相続の放棄

相続放棄は、相続人が法律に定められた手続きによって、相続する権利を放棄することを意味します。この手続きは、故人が残した負の遺産、つまり多額の借金など財産よりも負債の方が多い場合にしばしば用いられます。相続放棄をすると、その人は相続人ではなかったかのように扱われ、相続財産だけでなく負債からも解放されます。

相続放棄を行うためには、相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に放棄の申述をしなければなりません。この3ヶ月という期限は厳格に守られるため、期限を過ぎると放棄する権利を失うことになります。したがって、相続人は故人の財産状況を速やかに把握し、放棄するかどうかの判断を迅速に行う必要があります。

相続放棄の手続きは、家庭裁判所に直接行くか、郵送で行うことができます。必要な書類は「相続放棄申述書」であり、本人確認のための身分証明書などが必要になることがあります。また、相続放棄は無条件であり、一部の財産だけを放棄するといった部分的な放棄は認められていません。全ての相続財産について放棄することになるため、よく考えた上で決断する必要があります。

放棄が法律上有効となると、その相続人に代わってその人の子供が代襲相続人として相続する権利を持ちます。しかし、代襲相続人も同様に相続放棄を行うことができます。

相続放棄は、故人の負債を理由に自己の財産を守りたい場合などに有効な選択肢ですが、一度放棄をすると撤回はできないため、非常に慎重な検討が求められます。また、遺産整理が複雑な場合には、法律の専門家に相談することが推奨されます。

この記事を書いた人

税理士・中小企業診断士・行政書士 落合和雄
2005 年 3 月 税理士士登録(東京地方税理士会所属)
1987 年 1 月 中小企業診断士登録(東京都中小企業診断士協会所属)
2016 年 1 月 行政書士登録(神奈川県行政書士会所属)
税理士登録以降、相続案件に力を入れ、現在年間約 70 件の相続の相談に応じています。また、中小企業診断士として年間約20件の M&A を含む事業承継の相談に応じています。行政書士としては、遺言書の作成、家族信託の支援も数多く扱っています。
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