タワーマンションを使った相続税の節税がよく宣伝されています。確かにタワーマンションを購入すると相続税をかなり低くすることが出来ます。その理由は、タワーマンションは相続税の評価額と実際の時価の差が大きいので、2億円のタワーマンションを購入しても、その相続税評価額は4千万円程度になる場合もあり、その結果相続税はかなり安くなるからです。
例えば、4億円の預金を持っている方で、相続人は奥様と子供の2人とします。そうすると相続税は、
((4億円-4200万円)÷2×40%-1700万円)×2=1億920万円
になります。
ここで手持ちの預金を使って2億円のタワーマンションを購入すると、その相続税評価額は4000万円になりますので、相続税評価額の合計は2億4000万円になり相続税は、
((2億4000万円-4200万円)÷2×30%-700万円)×2=4540万円
となり、何と6380万円も相続税を下げることが出来ました。
しかし、このタワーマンションを利用した節税には、以下のようなリスクがありますので、十分に注意してください。
【リスク1:税務署に否認されるリスク】
タワーマンションを購入する目的が節税であることが明確である場合には、税務署に否認され購入価額でタワーマンションが評価され、節税が出来ないことになり、追徴を受けることになります。
典型的な節税目的と見做されるケースは、相続の直前にタワーマンションを購入し、相続発生直後にそのタワーマンションを売却するようなケースです。この税務署に否認されることを防ぐためには、
・相続発生よりもだいぶ前に購入しておくこと
・相続発生後すぐには売却しない
・居住用にするなど、マンションの購入目的を明確にしておく
などの対策が必要です。
【リスク2:税制改正が行われる可能性がある】
タワーマンションを利用した節税は、かなり問題視されていますので、何らかの税制改正によって、タワーマンションを利用した節税策が封じられる可能性があります。
想定される改正としては、
・相続発生前一定期間内に購入したマンションは時価で評価する
・タワーマンションの評価の方法が変更になる
などが考えられます。
【リスク3:借入金が返済できない】
現預金でタワーマンションを購入している場合は問題ないのですが、節税効果を高めるために借入金によってタワーマンションを購入する方も多いのです。この場合には借入金の返済が順調に行えるのかを十分に検討する必要があります。
タワーマンションは購入価額は高いですが、それを他人に貸した場合には、それほど高い金額で貸せるわけではないので、借入金の返済には不足するケースも多いです。また、賃貸していた部屋が空いてしまうと、途端に返済に窮することにもなってしまいます。それではということで、相続発生後にタワーマンションを売ってしまうと、税務署に否認されることにもなってしまいます。
したがって、借入金でタワーマンションを購入する場合には、その返済が問題なく行えるかどうかを十分に検討する必要があります。